概要
ルビーレーザーは、合成ルビー結晶を利得媒質とする固体レーザーの一種です。
1960年5月16日、ヒューズ研究所のTheodore H. Maimanによって作られたルビーレーザーが最初の実用化されたレーザーです。
ルビーレーザーは、波長694.3nmのコヒーレントな深い赤色の可視光線のパルス発振のレーザーで、一般的なパルス長は、1ミリ秒のオーダーとなっています。
構成
ルビーレーザーは、多くの場合、ロッド状のルビーを媒質として構成されています。反転増幅をさせるために、キセノンフラッシュランプ等で非常に高いエネルギーで励起します。このルビーロッドは共振器である 2 枚の鏡の間に置かれ、ルビーの蛍光によって生じる光を発振させ、誘導放出させられます。
ルビーは可視光領域の光を発する数少ない固体レーザーで、694.3nmで発振し、0.53nmという非常に狭い線幅であるというのが特徴です。
ルビーレーザーは他の材料に比べてパルス幅を長くすることができ、非常に高いエネルギーでの励起が可能です。また、非常に広い吸収プロファイルを持つ一方で、その変換効率は他の媒体に比べて非常に低いというのが欠点となっています。
また、近年美容用途で用いられる場合には、Qスイッチをつけて短時間だけ照射することで、皮膚へのダメージを減らす工夫もされています。
さらに、モード同期や増幅技術の進歩があり、1970年代には毎年数倍という驚異的な速さで改良が進められました。
特徴
長所
- 高い出力: ルビーレーザーは、高出力であるため、特に材料加工や医療において効果的です。
- シンプルな構造: 構造が比較的シンプルで、メンテナンスが容易です。
- コストパフォーマンス: 他のレーザーと比較して、初期投資が低い場合があります。
短所
- 波長の制限: 波長が694.3 nmに固定されているため、特定の用途には適さない場合があります。
- 冷却の必要性: 出力が高い場合、冷却が必要で、これがシステムの複雑さを増す要因となります。
他の手法との違い
ルビーレーザーは、ダイオードレーザーやファイバーレーザーなど他のレーザーと比較して、特に赤色光を発生させる特性があります。このため、特定の生体組織に対する選択的な吸収性が期待でき、医療分野での使用が増えています。
応用例
ルビーレーザーの最初の用途の1つは、距離測定でした。1964年には、回転プリズムQスイッチを備えたルビーレーザーが軍用距離計の標準となり、その10年後にはより効率的なNd:YAG距離計が製造されました。
また、ルビーレーザーは波長可変色素レーザを光学的に励起するために使われた最初のレーザーで、特に近赤外で発光する色素レーザーの励起に使用されました。
近年では、原因となるメラミンへの反応が高いレーザーであることから、シミやほくろ除去など美容用途での広がりも見せています。
残念ながら、ルビーレーザーは主に低効率と低い繰り返し周波数のために、産業ではほとんど使用されていません。しかし、ルビーレーザーの高出力ビームはダイヤモンドの赤色の幅広い吸収帯(GR1バンド)と相性が良いため、ダイヤモンドの穴加工に用いられたこともあります。
今後の展望
ルビーレーザーの技術は進化を続けており、特に医療分野での新しい応用が期待されています。また、より効率的でコンパクトな設計が進むことで、より多くの場面で利用される可能性があります。例えば、低侵襲な外科手術や、より精密な材料加工が進むことが期待されます。
まとめ
ルビーレーザーは、1960年代に開発されて以来、さまざまな分野での応用が広がっています。高出力やシンプルな構造が特長であり、医療や材料加工など多くの場面で活躍しています。今後も技術の進化に伴い、新しい応用が期待されるルビーレーザーは、今後の科学技術の発展に貢献する重要な存在であると言えるでしょう。興味を持たれた方は、ぜひさらに学んでみてください。