概要
微細レーザー加工に使用されるレーザーの一つにエキシマレーザーがあります。
その他の用途としては、紫外線分光の光源、光化学、レーザーリソグラフィー、レーザーアニールに用いられています。また、レーシックなど視力矯正治療にも用いられています。
構造
エキシマレーザーは、媒質となる希ガス原子とハロゲンガス原子の混合ガスであるエキシマ(エキサイマー)を用いていることが名前の由来となっています。希ガス原子(He, Ne, Ar, Kr, Xe)は安定ですが、励起状態では他原子(Br, F, Clなど)と結合します。このように励起状態でのみ安定に存在する2原子分子が excited dimer であり excimer(エキシマ、エクサイマ)の由来となっています。
レーザー準位としては、下位準位がなく、励起状態からすぐに基底状態となる良好な反転分布となります。この現象を利用したレーザーが、エキシマレーザーです。
混合ガスの成分により発振する波長が異なります。希ガスとハロゲンの組み合わせに対する発振波長は以下の通りです。
ArCl – 175nm
ArF – 193nm
KrCl – 222nm
KrF – 249nm
XeBr – 282nm
XeCl – 308nm
XeF – 351nm
レーザーの構成としては、放電励起方式で発振され、1~4気圧程度の高い圧力の混合気体に放電してレーザー発振されます。一般的に、放電には高い技術力が必要です。
メリット・デメリット
メリット
エキシマレーザーは、波長の短い紫外線領域において高フォトンエネルギー、および、高ピークパワーを得られるので、特に樹脂の加工に多用されてきました。しかも、効率も良く、装置が小さく、他のレーザーと異なり、面での加工ができることが大きなメリットです。
デメリット
媒質である混合ガスの寿命が短く、発振する波長が短く高エネルギーのため要素部品にダメージが大きいという欠点がありましたが、最近ではガスの高純度化や部品の改善により、1010ショット以上の長寿命化の達成も報告されています。実用化されているエキシマレーザーは、出力エネルギー~1J程度、パルス幅10~30ns、繰り返し周波数~1000Hz程度のレーザーが多いようです。
また、ガスはほぼ輸入に頼っており、特に東側諸国からの輸入であり情勢不安により供給が不安定になるリスクもあります。そのため、ガスレーザーからガスが不要な固体レーザーへの移行が進んでいるようです。
歴史
最初に実現されたのはXe2レーザーと言われています。液体希ガス中に電子ビームを照射させてレーザー発振が得られました。その後、希ガスとハロゲン原子が結合した希ガスハライドが出現し高出力・高効率の紫外線を発振するレーザーとして多用されるようになりました。