レーザーを使った加工応用の一つに、「曲げ加工」があります。金属板金の曲げ加工は、物理的な圧力を加えて材料を曲げるベンダーが使われますが、レーザーでも「曲げ加工」を実現できます。
レーザーを物体に照射すると、物体は熱せられます。一般に物体は加熱により、熱応力が発生して歪が生じます。この歪は通常はNGとなるのですが、うまく制御することで物体を変形させられます。この熱応力を積極的に利用する塑性加工がレーザー曲げ加工です。レーザーフォーミングと呼ばれることもあります。
この技術を応用できる材料は、ほぼ金属です。金属へ溶融が起きない程度の温度となるようにレーザーを照射してエネルギーを与えます。この時、レーザー照射位置は高温となるため、金属材料が膨張します。照射をやめると冷却され、反対に収縮します。
この原理を上手く利用して、熱歪の応力で材料を曲げます。直線的な曲げでは、材料に対してレーザー照射位置を直線的に走査することで、直線状の応力歪を発生させ材料を直線状に曲げます。レーザーを照射する直線を平行に少しずつずらして、徐々に曲げていき、結果として材料をカールさせることも可能です。さらに、高度な技術として同心円状にレーザーを何重にも走査することで円錐形状を形成したり、自由曲線による任意形状の創成もできます。
このレーザーフォーミングの技術は、金型が不要な加工方法であり、まさにデジタル技術が活かせる技術です。データの変更で形成できる形状を自由に設定できため、多品種少量生産に適しているといえます。また、過度な応力を加えないため、材料を破損させることもないようです。また、加工条件を最適化することで、折り曲げ角度の微妙な制御もできます。
しかし、熱歪による加工であるため、熱のち密な制御が必要となります。1つの加工条件を出すために多くの試行錯誤も必要です。このように難しい技術でもあるために、あまり、広くは利用されていないようです。
レーザー光源としては、CO2レーザーやファイバーレーザーが用いられます。これらのレーザーで、平均出力が数十W程度のレーザーが多用されます。材料やレーザーの条件によりますが、加熱部は材料の融点よりずっと低い数百度(<千度)となります。熱による歪を利用した加工のため、レーザーを照射する材料表面と裏面で温度差をつけるような加工条件に設定する必要があります。そのため、付加的に板をあてたり、ペーストを塗ったりすることもあります。
レーザーは、除去加工のみではなく、このような塑性加工にも利用されています。