ディスクレーザーとは
概要
ディスクレーザーとは、固体レーザーの一種で、名前の由来となっているように、レーザー媒質が薄いディスク(円盤)状になっています。
従来のYAGレーザーなど固体レーザーの媒質の形状はロッド状です。しかし、デメリットとして「熱レンズ効果」というのがあります。これは、レーザー媒質が均一な温度とならず内部ひずみを持ちビーム品質が低下する現象のことです。
その問題を解決したのがこのディスクレーザーです。固体レーザーでありながら媒質を円盤状にすることで媒質全体に均一に効率的な冷却法を適用できるようになりました。これにより熱レンズ効果は大幅に低減され、ビームモード、発振効率、出力変動、発散角などの安定性が飛躍的に向上しています。
構成
最大の特徴であるレーザー媒質は直径数ミリメートル、厚み約~200μmの薄い円盤状となっています。この円盤状媒質が冷却用ヒートシンクに面で接触しています。面での接触となりますので、均一的な温度分布が期待でき、熱を効率よく発散させることができます。
円盤の垂直方向に対して若干角度をつけて励起光を入射させ、発振させます。
その他の基本構造は、他の固体レーザーとほぼ同一です。
発振方法としては、CW、パルス発振の両方がありますが、溶接や切断用途ではCWが利用されています。また、精密加工、微細加工用に短パルスのディスクレーザーも開発されています。
特徴
ディスクレーザーの最大のメリットは、媒質が平面であるため、面で冷却ができる点です。ロッド状の媒質では、その冷却に苦労しました。また、冷却が不均一だと熱的な歪でビーム品質が劣化するという問題がありました。しかし、平面一様冷却が実現できるディスクレーザーでは、高出力かつ高効率の安定したビーム品質が得られます。
また、先述したディスク本体が面で接着されるので、円盤をヒートシンクへ強固に接着でき、機械的にも安定したものとなります。
応用例
最大の応用例は、自動車部品の溶接です。ビード幅が狭く高速に溶接できるために量産現場での利用が多いです。
また、加工部の熱ひずみが小さいため、精密溶接にも適しています。そのため、電子デバイスの溶接など精密さを要求される生産現場での利用が増えています。
さらに、その出力を活かして切断用途でも活躍しています。一例として、4kWのディスクレーザーにて、板厚1mmの軟鋼を40m/min以上の速度した例もあります。
歴史
ディスクレーザーは、1993年にシュツットガルト大学のDr. Adolf Giesenらによって開発され、スピンアウト企業として成長したのち、今では他社に買収されています。