概要
自由電子レーザー(Free Electron Laser; FEL)とは、加速器で発生する自由電子を利用するレーザーです。
一般的なレーザーは単色で、指向性、収束性、干渉性に優れていますが、束縛準位間の遷移に伴って放出されるため、放出される光の波長が限定的です。
自由電子レーザーは、相対論的にエネルギーを持つ電子と電磁場との共鳴によりコヒーレントな電磁波を発生させるため、磁場強度および電子のエネルギーを変えることで発振波長を連続的に変更が可能です。
特徴
自由電子レーザーの最も大きな特徴は、発振波長が可変であることです。
また、従来のレーザーでは利用が困難な遠赤外および真空紫外軟X線領域での発振も可能です。
さらに、、媒質を利用するため避けられなかった発熱の問題がないことも利点です。
構成
自由電子レーザーでは、電子加速器でほぼ光速にまで加速した電子ビームをアンジュレータと呼ばれるN極とS極を交互に持つ小型の磁石群の中の磁場で蛇行させシンクロトロン放射光を発生させます。アンジュレータの中を進行する相対論的エネルギーを持つ電子を合わせ鏡で構成する光共振器内に閉じ込め共振周波数の電磁波を重ねることで、電子は電磁波の電界により減速されて電磁波を発生し電磁波が増幅されます。これがレーザーでの誘導放出に相当します。自由電子レーザーの主な原理となっています。
応用
主に研究用途での応用が多いです。その分野は幅広く、有機化学や固体、半導体材料の解析、分光や生物材料の解析などに利用されています。
歴史
1975年から1977年に米国スタンフォード大学線形加速器研究センター(SLAC)でJ.M.J.Madeyらは43MeV、2.6Aの電子ビームを用いて3.4μmの光の発振に 初めて成功しました。その後、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)など、各国で自由電子レーザー装置の研究が行われるようになりました。
Spring8では、2006年6月には、全長60mの試験加速器で波長49ナノメートルという紫外線領域のレーザー光の発振に成功、2010年には全長約800mの装置を完成させ、波長0.06nmのX線レーザー光を実現させました。